米国経済指標レポート
【図解】米国商品市況
Daiki Market Report Weekly
Daiki Market Report Monthly
投資分析室
会社概要
サイトマップ
トップページ





トップページDaiki Market Report Monthly > 【2007年7月】 原油・石油市場

【2007年7月】 原油・石油市場

ガソリン需給タイト化の流れを阻止するのは難しい

大起産業(株)調査研究室 小菅 努

Tel:052-201-6311(代表)
E-Mail:kosuge_tsutomu@hotmail.com

リスクに反応する原油相場
 3月下旬以降のNYMEX原油相場は、概ね60-68ドルの高値圏での取引を継続している。米国は既に夏場のドライブシーズンに突入しているが、これからガソリン需要の拡大と共に需給逼迫構造が顕在化し、原油相場の下値は切り上げられるとの思惑が、下値を強力にサポートしている。第2四半期の在庫水準は前年同期を下回り続ける一方、需要は逆に前年同期を上回る見通しであり、需要と供給の双方から需給タイト化が促される見通しとなっている。特に、昨年同様に米製油所のガソリン精製環境に障害が発生すれば、ガソリン供給が石油需給のボトルネックと化している事が再確認され、原油相場には大きな上昇余地が生じる事になる。

ガソリン需給は昨年以上にタイト化
 ここで足下のガソリン需給環境に目を向けると、EIA(米エネルギー情報局)発表の米ガソリン在庫は2億2,721万バレル(2月2日)をピークに減少トレンドに突入し、4月13日には1億9,310万バレルまで減少している。12週連続の在庫減少で、その間に3,411万バレルの在庫削減が進んだ事となる。ただ例年、この時期はドライブシーズンに向けての生産拡大を前に製油所が定期検査・補修を行う為、ガソリン在庫が減少トレンドを形成した事には特段の問題はない。マーケットが注目したのは、こうしたガソリン在庫の減少ではなく、前年同期比ベースでの在庫水準の低さである。特に、4月下旬以降は製油所火災や操業トラブルが相次いだ結果、製油所稼働率の回復が遅れ、供給サイドから在庫減少ペースが加速している。通常の生産環境でもドライブシーズン中の需要に対応できるか不透明感が強い中、精製環境の悪化は需給逼迫リスクを著しく高める事となる。
 原油価格の高留まりを受け、エネルギー各社は過去最高水準の増収・増益を達成しているが、自社株買いや配当による株主還元が優先されており、増益分を設備増強に当てる動きは弱い。昨年夏のガソリン価格高騰で消費者や政界からの批判を受けたエネルギー各社は、2007年度予算に製油所の大規模な設備増強計画を盛り込んでいた。しかし、EIAのカルーソ局長によると、その計画の3分の1が中止されている模様だ。1年前は日量150万バレルの精製能力拡大が計画されていたのに対し、現在は同100万バレルの計画に留まっており、精製環境の改善は遅れている。ガソリン小売価格は4月下旬に3ドルの大台に乗せ、既にハリケーン・カトリーナ等の影響で石油供給体制が壊滅的被害を受けた昨年高値3.083ドルを上回っている。ただ、バイオエナジーの生産拡大や建設資材の価格高騰、労働コストの上昇などから、設備増強に見合ったリターンを得られるのか不透明感が強い為、設備投資の動きは抑制されている。
 こうした状況が続く限り、ガソリン供給が需要の拡大ペースを上回る事は難しく、今年も需要が本格的に拡大する7-8月に、需給逼迫リスクが顕在化する流れを想定している。昨年高値78.40ドルを上抜くには、地政学的リスクの高まりや、天候障害などの支援材料が必要となるだろうが、70ドル台前半から中盤は特にサプライズ要因がなくとも、十分に達成可能な価格帯と見ている。

原油の短期需給は安定見通し
 こうして原油相場が高留まりする中、消費国サイドからはOPEC(石油輸出国機構)に対する増産要請が相次いでいる。例えば、IEA(国際エネルギー機関)のマンディル事務局長は、突発的な自体が発生して十分な供給が担保される事を市場が認識できる様にする為、今夏に原油生産を引き上げる必要性を指摘している。また、前出のEIAカルーソ局長は、冬の暖房用燃料需要を満たす為、下期に生産を拡大する必要があるとしている。しかし、仮にOPECが大規模な増産に踏み切ったとしても、原油相場の本格的な調整を促す事は難しいと見ている。確かに原油相場は高留まりしているが、供給不足が生じているのは「原油」ではなく、ガソリンやヒーティングオイルといった「石油製品」である為だ。
 DOE(米エネルギー省)が4月以降に、SPR(戦略石油備蓄)への搬入を開始している事からも、原油需給は特に逼迫化していない事が窺える。ボドマン米エネルギー長官は1月の段階で、今年度に累計1,000万バレルをSPR向けに搬出する計画を打ち出していたが、これまでは市場価格に対する過度のインパクトを避ける為に、同計画は実行に移されていなかった。しかし、4-5月には138.5万バレルが市場から拠出されており、当局が原油需給バランスの維持に自信を持っている事が推測される。
 第1四半期には、OPECが大規模な減産に踏み切る一方、需要の拡大傾向が維持された事で、OECD(経済協力開発機構)加盟国の原油在庫に強力な減少圧力が働いた。だが、足下の米原油在庫は概ね前年同期の水準を維持しており、当面は原油需給主導の相場変動は回避される見通し。OPECがこのまま増産を先送りすれば、年末に向けての原油在庫は減少トレンドを形成する可能性が高いと見ているが、こうした原油需給がテーマ化されるには時期尚早だろう。現状では、世界的に良好なマクロ経済環境が、60ドル水準からの下落余地を限定している事だけを、確認しておけば十分と考えている。ドライブシーズン明けが意識される8月下旬までは、ガソリン相場主導で底堅い展開が続く見通しである。

このページのトップへ