|
白金市場の需給動向を分析する際の最重要指標の一つである、
Johnson Matthey(ジョンソン・マッセイ)社の需給報告を解説します。
毎年5月と11月の年二回にそれぞれ前年度の需給報告が発表されており、
当報告書はその後6ヶ月間の需給分析の基礎資料となります。
全体では50枚を超える大部となりますが、ここではその概要を簡単に解説します。
白金市場の需給分析にご活用下さい。
なお、より詳細な需給データは、『別冊スペキュレーション 商品二季報』でも提供しております。
|
| 【2008/05/20(火)更新 大起産業(株)調査研究室 小菅 努】 |
|
| Summary 【需給概要】 |
| 2007年の白金需要は前年比-55.0万オンスの703.0万オンスとなっている。宝飾需要の落ち込みが続いているが、自動車触媒や工業関連、投資需要が堅調だったことで増加トレンドを維持している。一方、供給は同-28.0万オンスの655.0万オンスに留まった。南アフリカ共和国の生産状況が悪化していることが、総供給量の抑制につながっている。同国では、安全上の問題によって操業率が低下しており、生産計画の大幅な下方修正を迫られている。 |


| Supply-1 【南アフリカの供給状況】 |
2007年の南アフリカ白金供給量は、前年比-26.0万オンスの503.5万オンス。鉱山操業における安全問題が浮上したことや、熟練労働者不足、労働争議の活発化などから、生産計画の達成が難しい状態となった。最大手アングロ・プラチナの供給量は、前年比-12%の247万オンス。主要鉱区での生産が軒並み落ち込む一方、パイプライン在庫の積み増しが進んだことで、大幅な落ち込みとなっている。
インパラ・プラチナの供給量は、前年を上回る109万オンスとなっている。ただ、鉱山生産164万オンスに対して供給量は抑制されており、精錬能力不足が顕著となっている。
ロンミン・プラチナの供給量は、前年比-13%の83.7万オンス。同社最大の精錬所が4ヶ月に渡って閉鎖された他、熟練労働者の欠勤率が上昇したことで、供給が落ち込んでいる。 |

| Supply-2 【ロシア/北米の供給状況】 |
2007年のロシア供給量は、前年比-1.0万オンスの91.0万オンス。ノリリスク・ニッケルの生産が抑制されたことで、同国からの供給量は伸び悩んだ。パラジウムは政府在庫の売却が行われたが、白金に関しては政府在庫の大規模な変動はなかった模様。
2007年の北米供給量は、前年比-2.0万オンスの32.5万オンス。スティル・ウォーターや旧インコ・ニッケルなどの減産による。一方、ジンバブエの供給量は前年比+1.0万オンスの28.0万オンスと堅調。 |


| Demand-1 【自動車触媒の需要動向】 |
2007年の自動車触媒需要は、前年比+32.0万オンスの422.5万オンス。欧州での伸びが一服したものの、北米や中国での需要が上振れしていることで、8年連続で前年実績を上回った。
欧州では、前年比+2.0万オンスの208.0万オンス。自動車販売はほぼ横這いとなったが、ディーゼル車市場の拡大が続いていることで、白金使用量は押し上げられている。ただ、価格高騰の影響で触媒需要を白金からパラジウムに切り替える動きも強くなっている。
日本では、前年比+1.0万オンスの61.5万オンス。国内自動車販売は前年比-5.2%と大きく落ち込んだが、海外向け輸出が堅調だったことで、前年実績を上回っている。国内販売分の殆どはガソリン車となっているが、輸出車はディーゼル車の比率が高い。
北米では、前年比+22.5万オンスの93.0万オンス。自動車生産は落ち込んだが、大型ディーゼル車の環境規制が強化されていることで、白金需要は大幅に引き上げられている。ガソリン車ではパラジウム使用へのシフトが進んでいるが、ディーゼル車では白金使用率が高水準を維持している。
中国では、前年比+6.0万オンスの21.5万オンス。環境規制の強化と自動車市場の拡大が同時に進行しており、需要は大きく引き上げられている。EuroV準拠の環境規制導入は2008年に先送りされたが、市場の拡大は続く見通し。
その他地域では、前年比+0.5万オンスの38.5万オンス。インド、南米、ロシアなどの新興国での自動車生産が堅調だったことが寄与。また、韓国で欧州向けディーゼル車生産も堅調だった。 |

| Demand-2 【宝飾品の需要動向】 |
2007年の宝飾需要は、前年比-5.5万オンスの158.5万オンスとなる見通し。価格の高騰に加えてボラティリティが高まっていることで、加工業者が白金使用を敬遠している。特に、日本市場の縮小が目立った。ただ、中国や欧州地域での販売は上振れしており、地域間格差が大きくなっている。
欧州では、中国では、前年比+2.0万オンスの78.0万オンス。これまで価格高騰の影響を強く受けてきたが、北京オリンピック向けのノベルティ商品の生産が拡大していることで、全体の需要が底上げされている。また、良好な経済環境で消費者の可処分所得が引き上げられていること、人民元高でドル建て相場上昇の影響が相殺されたことも、需要の底打ちにつながった模様。
日本では前年比-8.0万オンスの28.0万オンス。古い宝飾品のスクラップ供給が膨らみ、加工業者の新規購入量が抑制されている。また、婚姻件数の減少も需要減少につながっている。 |

| Demand-3 【工業の需要動向】 |
工業需要は、前年比+11.0万オンスの194.0万オンス。
ガラスは前年比+2.5万オンスの43.0万オンス。テレビ向けにLCDガラスの普及が進んだことが寄与。アジア地区を中心に新規プラントの建設計画も増えている。
電気製品は前年比+6.5万オンスの42.5万オンス。コンピュータ向けハードディスクが引き続き堅調となっている。個人向けパソコン市場の拡大が寄与。
石油は前年比+2.5万オンスの20.5万オンス。原油かあくの高騰で精製施設の建設が拡大している。特に、欧州や北米で新規プラントの建設件数が増えている。
化学は前年比-0.5万オンスの39.0万オンス。シリコン製品などで白金使用量を削減する動きが広がった。 |

| Outlook 【展望】 |
南アフリカの供給は、電力不足だけではなく、洪水や地質、労働問題などで落ち込んでおり、今後も厳しい供給環境が続く見通し。一方、需要は自動車触媒需要の拡大が続くことに加え、上海取引所で宝飾加工業者の買い付けが旺盛なことで、宝飾需要も大きく落ち込む可能性は低い。また、ETFに対する投資が2007年末から加速していることも注目される。
この結果、需要超過状態は維持され、2008年も価格は強含みの展開が想定される。米経済の減速による需要減退リスクもあるが、今後6ヶ月の価格見通しは1,775-2,500ドルとなる。 |
|